海外リモートワーク事情

リモートワーク
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2016年に国土交通省が調査した日本国内のリモートワーク事情は、週に8時間以上本拠地のオフィスを離れてリモートワークで仕事をする人は、2015年には、就業人口(約6,470万人)の17.0%、約1,100万人だったそうです。

約1,100万人のリモートワーカーのうち、ユニークなのは国内検索大手ヤフーの取り組みかも知れません。「どこでもオフィス」と呼ばれるヤフーのリモートワーク制は、「自由な場所で仕事をする」という発想の下、イノベーションを生むための制度として活用されています。

社内で業務することが多いとどうしても限られた人とだけ話したり、担当領域の人たちだけの会話になったりしがちで、業務へのインプット量が減ってきます。社外に飛び出すことで普段会えない人と一緒に仕事をし、刺激を受けて自分の業務に還元して欲しい。そうした意図でリモートワークを推奨しているもので、在宅勤務の義務化というわけではありません。

こうしたIT系企業で導入されているリモートワーク。海外の企業ではどんな活用をしているのか、海外リモートワーク事情をのぞいてみましょう。かなり先進的な事例があるかも知れません。

事例1:アメリカのリモートワーク

海外に目をやってみましょう。GDPが18兆6240億USドルで世界一のアメリカ。日本のそれがUSドル換算で約5,000億USドルとされていますから、金額では3倍という規模を誇ります。

2009年の統計では、アメリカの就業者数は約14,200万人。
アメリカでリモートワーク(テレワーク)は、企業に籍を置く雇用型と独立したフリーランスの自営型に分類されているようです。それぞれの人口は、

2010年の雇用型テレワーカー数:約1,700万人
2010年の自営型テレワーカー数:1,000万人弱

で、合わせて全体のテレワーカー数:2,620万人となり、先の就業者数は約14,200万人から計算すると、約19%の割合がリモートワーク人口という事になります。

リモートワークで働く人(2,620万人)の内、39%の人たちが、少なくとも週に1回リモートワーク勤務で、45%はほぼ毎日リモートワーク勤務という調査結果でした。

テレワーカー(リモートワーカー)の立場で見ると、半数近くはほぼ毎日リモートワークをしている、というのはアメリカでリモートワークが浸透している事を裏付ける数字でしょう。

アメリカの企業の立場でリモートワークを見てみましょう。2011年の調査資料によると、月1回、週1回以上のテレワーク(リモートワーク)制度のある企業は半数を超えている。その内、対象者が全従業員である企業は28〜29%という結果でした。

リモートワーク制度にも、ケースバイケースでリモートワークを適宜取り入れるアドホック(適時)テレワーク制度のある企業は8割を超え、その内、対象者が全従業員出歩き行は48%。フルタイム(完全)テレワーク制度のある企業は4割弱。内、対象者が全従業員である企業は16%という内訳になっていました。

リモートワークを制度として取り入れている企業の割合が半数を超えている、という事実はICTインフラの充実云々より、国土が広く通勤や人材確保のためにリモートワーク(テレワーク)を導入している、という企業側の理由が垣間見えます。

AT&Tの事例

アメリカでも最大手のインターネットメディア・電話会社であるAT&Tの事例をご紹介します。AT&Tのリモートワーク実施状況を見ると、マネジャー職の6割超が実施し、そのうち、完全在宅勤務が2割部分在宅勤務(少なくとも週に1日)が3割強という数字が出ています。

AT&Tがリモートワークを取り入れた理由は、オフィススペース、パーキングスペースのコスト削減、従業員のワークライフバランス確保、そして何より優秀人材の流出防止でした。

人材が流動的なIT業界において、AT&Tは優秀人材が他社に流れることをもっとも恐れたのです。
その狙い通り、リモートワーク制度導入により金額換算で200万USドルもの人材を流出から防いだ実績があります。

アメリカのリモートワーク事情

国土が広く、終身雇用制度もないアメリカにおいては、グローバル企業から中小零細企業まで、テレワーク(リモートワーク)は「ごく普通の働き方」として定着しているようです。いまや、リモートワークという働き方を特別扱いする考え方も薄まりつつあります。

事例2:ヨーロッパのリモートワーク

イギリスのEU脱退決定と結束が緩みつつあるEU。そのヨーロッパでのリモートワーク事情を見てみましょう。

SIBIS(Statistical Indicators Benchmarking the Information Society)という機関がEU各国のリモートワーク事情を調査した結果(2003年)があります。それによると、リモートワーク(テレワーク)の定義を、以下の3つに分類した上で統計を採りました。

1.在宅勤務テレワーカー:自宅で仕事を行い、仕事の成果を電子的に送信する人
2.モバイルテレワーカー:少なくとも週に10時間以上自宅あるいはメインの仕事場所から離れて、仕事のためにオンラインでコミュニケーションをとっている人
3.自営業におけるテレワーカー:自宅を主たる仕事の場所とするフリーランスあるいは自営業者で、顧客との間のコミュニケーションにICTを利用している人

この定義によって全就業者数に占めるリモートワーカーの割合を調査しました。その結果、第一位はオランダで26.4%、次いでフィンランド21.8%、デンマーク21.5%と続きます。EU全体で見ると、13.0%の割合でリモートワーカーが占めます。

EUにみるリモートワーク導入の背景

EUでテレワーク(リモートワーク)が推進されたのは、GDPが18兆6240億USドルのアメリカという巨大市場に対抗するためでした。EUという国の枠組みを超えた経済市場を作り、アメリカとの競争に臨むためリモートワークを始めとする生産性の高い働き方や経済制度の導入が戦略的に急がれたのです。

しかし、2000年に策定された「リスボン戦略」という経済施策は2004年の中間報告を持って頓挫します。その理由は、EU参加各国の政治的な足並み不揃いでした。元来、独立国家の集合体であるEUは、政治事情・経済規模の違いを超えてアメリカに対抗しうるひとつの巨大マーケットを生み出す事を目的としていました。

しかし、その政治的な独立性ゆえに各国間で調整不足や課題優先順位の混乱が発生したのです。その混乱は、2016年6月イギリスの国民投票でのEU離脱が賛成多数を勝ち取る結果となりました。

その後のEUのリモートワーク

イギリスが国民投票でEU離脱を決めた後、EU全体としてリモートワーク導入・浸透が停滞したわけではありません。2016年6月イギリスの国民投票に遡る、2006年10月にEU主要国は各国別にリモートワークに関する枠組み合意書に署名調印しました。

その枠組み合意書の主な内容は、

テレワークの任意性:従業員・雇用者の両者に選択権を認める
雇用条件:差別的取り扱いの禁止
データの保護:セキュリティ確保に関するルールの策定
テレワーカー(リモートワーカー)のプライバシー尊重
テレワーク(リモートワーク)に必要な機器等:コスト負担などのルール作りとサポート体制の拡充
健康と安全:VDT作業に関するルールの遵守など
トレーニング:差別的取り扱いの禁止
団体の権利:オフィス勤務者と同じ労働者の団体権など

と多岐に渡りリモートワークに関するルールを定めました。

リモートワークというと技術先行のイメージがありますが、リモートワークの選択権を従業員・雇用者の両者に認める事や、オフィス勤務者と同じ労働者の団体交渉権を認めるなど、より勤務者に寄り添った方針が見えます。
この辺りは、政府主導で企業の思惑が優先する日本のリモートワーク事情とは、先進性が違います。

海外リモートワーク事情:まとめ

アメリカとEUのリモートワーク事情をご紹介しました。日本とは様々な面でリモートワーク導入の背景が異なる事がお分かりいただけたと思います。EUの事情を見る限り、日本のリモートワーク事情はリモートワーカーの権利を守る点でまだ改善の余地がありそうです。

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海外でのリモートワークを夢見るアラサー男子です。今は本業やりつつ、リモートワークで本業を活かした副業をしながら経験を積んでいます!

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